企業型確定拠出年金

確定拠出年金企業型と退職金の4つの違いについて

こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 認定FP

アイマーク株式会社 代表の村松です。

確定拠出年金企業型と退職金は、どちらも老後生活資金として役立つ制度です。大きな役割は同じですが、その仕組みや、運用方針には多くの違いがあります。この記事では、両者の違いと、確定拠出年金企業型のメリットとデメリットについてご紹介します。

退職金と確定拠出年金企業型の4つの違い

退職金と確定拠出年金企業型の主な違いについて確認していきましょう。

  退職金 確定拠出年金企業型
掛金の仕組み 会社が準備 基本は会社が掛金を拠出。しかし、従業員の給与の一部を掛金にあてたり、任意で上乗せしたりできる場合もある(マッチング拠出)。
受給額や受け取り方法 社内の退職金規定により、勤続年数や役職で決定 積み立てた掛金の運用実績による
運用方針の決定 社外積立の場合は、会社の担当部署が行う 従業員自身で決定・変更が可能
税制の取り扱い 退職所得控除
  • 掛金は全額所得控除
  • 利息や配当、運用益は非課税
  • 一時金受取は退職所得控除/年金受取は、公的年金等控除の対象

掛金の仕組み

退職金は企業が外部積立で用意する場合でも、毎月掛金を拠出し、退職金規定によって役職や勤続年数でおおよその支払金額が決まっています。万が一、退職金支給時に積立額が不足している場合は、企業が追加負担をして支払わなければなりません。

一方、確定拠出年金企業型は企業が掛金を負担する点は同じですが、掛金があらかじめ決まっています。また、毎月の拠出限度額は55,000円と27,500円であり、以下のように加入している制度によって異なります。

 

加入状況 拠出限度額
確定拠出年金企業型 のみ加入している 月額55,000円(年額660,000円)
+中小企業退職金共済
+退職一時金
+確定給付企業年金 月額27,500円(年額330,000円)
+厚生年金基金

また、確定拠出年金企業型には、従業員の任意で上乗せ拠出できるマッチング拠出や、給与の一部を確定拠出年金企業型の掛金として活用するかどうかを選択できる「選択制確定拠出年金」など、掛金の拠出方法に豊富な選択肢が用意されています。

受給額や受取方法

退職金は、定年退職ではない場合も退職金規定に基づいた金額が支払われます。

一方、従業員が個人で投資スタイルを選べる確定拠出年金企業型は、どのような運用方法を選択したかによって退職時の受取金額が変わります。なお、一部の例外を除いては60歳より以前に退職金として受け取ることができません。

受取方法は退職金・確定拠出年金企業型のいずれの場合も、年金形式または一時金形式のどちらからでも選択できます。

税金の扱い

退職金は受け取りの段階で退職所得控除の対象になります。一方で、確定拠出年金企業型は、運用中や受け取り時に利用できる控除が複数あるため、以下を参考にしてください。

適用場面 控除
拠出時 掛金 全額所得控除
運用中 運用益 非課税
受取時 年金形式 公的年金等控除
一時金形式 退職所得控除

運用方針

退職金制度の場合、運用方針は企業が決定し、支払いまでの全責任を負います。

一方、確定拠出年金企業型は用意されている複数の商品の中から従業員が商品を選んで運用します。そのため、運用の結果は従業員自身が責任を負わなければなりません。

確定拠出年金企業型のメリット

確定拠出年金企業型の代表的なメリットである、税制優遇と、便利なポータビリティについて解説します。

転職先へ持ち運びができる

確定拠出年金企業型は、原則60歳まで受け取ることができません。そのため、確定拠出年金企業型を導入している会社を60歳より前に退職・転職した場合でも受け取ることはできず、基本的には積み立てた資産を持ち運ぶようになります。この持ち運び制度を「ポータビリティ」といいます。

ポータビリティは、転職先企業に確定拠出型年金企業型があるかどうかによって、対応が以下のとおりに異なるのです。

転職先に確定拠出年金企業型がある場合 転職先の確定拠出年金企業型へ移換
転職先に確定拠出年金企業型がない場合 脱退一時金もしくは確定拠出年金個人型(iDeCo)へ移換
自営業・個人事業主として働く場合
公務員になる場合
専業主婦(夫)になる場合

税制優遇が受けられる

確定拠出年金企業型の掛金には、所得税・住民税がかかりません。そのため、確定拠出年金企業型で毎月の給与から1万円を拠出したとすると、1万円をそのまま運用にまわすことができます。

しかし、一旦給与として受け取った後に運用する場合は、1万円から所得税・住民税が差し引かれた金額からの運用スタートと考えることができます。

また、確定拠出年金企業型で運用中の利息・配当・運用益には税金がかからず、再投資が可能です。通常なら運用益に20.315%の税金がかけられてしまうことから、大きな税制優遇といえます。

さらに、受取時も一時金で受け取った場合は退職所得控除、年金形式で受け取った場合は公的年金等掛金控除という税制優遇を受けることができます。

確定拠出年金企業型のデメリット

魅力的なメリットの多い確定拠出年金企業型ですが、利用にあたって以下のようなデメリットも存在します。

元本割れのリスクがある

確定拠出年金企業型の商品ラインナップの中には、満期まで持っていれば元本割れしない「元本確保型」の商品と、運用によって元本が変動する「元本変動型」の商品があります。両者には優劣はありませんが、自分のリスク許容度に応じた選択ができなければ、望まない運用結果になってしまうことを忘れてはなりません。

商品によっては、元本割れのリスクがあることを理解して商品選択を行いましょう。

社内留保ではないため運用リスクの考慮が必要

確定拠出年金企業型は、従業員が自分で掛金を拠出して運用していくものなので、企業が他の制度を併用していない限り社内留保はありません。つまり、確定拠出年金企業型で満足のいかない結果になっても、企業が負担してくれることはないのです。

将来の受給金額が確定していないことや、運用リスクも考慮しておく必要があります。

退職金と確定拠出年金企業型の違いを理解して役立てよう

退職金と確定拠出年金企業型は、どちらも企業が利用できる退職金制度ですが、その仕組みや運用方針には大きな違いがあります。公的年金制度が、今後も現在の水準で推移するとは限りません。

退職金や確定拠出年金企業型の仕組みを理解して、自分の老後の資産形成に役立てていきましょう。
もし、内容がわかりにくいと感じた場合は、専門家に直接相談してみるのがおすすめです。アイマークでは、確定拠出年金企業型を始めとしたさまざまなファイナンシャルセミナーを開催しておりますので、ぜひ日程や内容を確認してみてはいかがでしょうか。

確定拠出年金企業型で運用できる商品の種類と選定のポイント

こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 認定FP

アイマーク株式会社 代表の村松です。

確定拠出年金企業型には、多くの運用商品が存在します。毎月掛金を拠出して、数ある投資商品のなかから自分で選んで投資をしていく必要があるため、それぞれの商品特徴をしっかりと理解しておきたいものです。

この記事では、確定拠出年金企業型で運用できる商品の分類方法と、選定のポイントをご紹介します。

確定拠出年金企業型の運用商品は大きく分けて2種類

確定拠出年金企業型で取り扱う商品は、預金や保険商品、各種投資信託などさまざまな種類があります。多くの商品があって迷ってしまいますが、まずは大きく「元本確保型商品」と「元本変動型商品」の2つに分類することができます。

元本確保型|原則元本割れが起こらない商品

元本確保型商品は満期まで持っていれば原則元本割れしない商品です。主に以下の特徴があります。

  • 原則として、いつ解約しても元本は保証されている
  • 利率は一定期間ごとに固定と見直しが行われ、解約まで運用が続く
  • 期間は商品によって異なる

主に「定期預金」や「保険」商品があり、リスクは極めて少ないですが、大きく増えることも期待できません。元本確保型は、資産を減らしたくないと考える人におすすめの商品です。

元本変動型|リスクとリターンが大きめの商品

元本変動型商品は、大きな収益が期待できる反面、元本割れをする可能性もある商品です。主に以下の特徴があげられます。

  • 元本が保証されていないため、資産が減る可能性もある
  • 運用成果によっては資産を大きく増やすことも可能

確定拠出年金企業型においては元本変動型商品の取扱いは「投資信託」のみとなっています。元本変動型は、ある程度のリスクを取りながら資産を増やしていきたい人におすすめの商品です。

運用商品の選定ポイント

運用商品は、大きく元本確保型と元本変動型に分けられますが、特に元本変動型は数多くの商品があります。そのため、各商品の特徴やリスク、リターンについても理解をしておきましょう。

金融商品の運用方法

元本変動型商品である投資信託は、その投資対象によって以下のように3つに分類されます。

投資信託の種類 特徴 リスクとリターン
株式投資信託
  • 株式を組み入れた投資信託
  • 国内株式投資信託と海外株式投資信託に分類できる
ハイリスク・ハイリターン
債券投資信託
  • 債券を組み入れた投資信託
  • 国内債券投資信託と海外債券投資信託に分類できる
ミドルリスク・ミドルリターン
バランスファンド 株式投資信託や債券投資信託など複数の種類を組み合わせた投資信託 組み合わせ方によって調整可能

 

一般的には元本確保型商品が最もリスクもリターンも小さく、債券投資信託がミドルリスク・ミドルリターン、株式投資信託はハイリスク・ハイリターンに分類されます。

また、同じ債券投資信託や株式投資信託のなかでも、国内よりも為替リスクの影響がある海外の商品の方が、リスクもリターンも大きい傾向です。

確定拠出年金企業型は、複数の商品ラインナップから、それぞれの投資商品のリスクとリターンを考慮して自分で選択していく必要があるため、その特徴をしっかり理解しましょう。

運用方針は「パッシブ」か「アクティブ」か

投資信託とは、投資のプロであるファンドマネージャーにお金を預けて運用をおまかせするものです。

そして、投資信託にはそれぞれ運用方針があり、大きく「パッシブ運用」と「アクティブ運用」の2つの手法に分類されます。両者の主な特徴は以下のとおりです。

運用方針 特徴 リスクとリターン 手数料
パッシブ運用 日経平均株価やTOPIXをベンチマークとし、ベンチマークに連動した運用収益を目指す 低め 低め
アクティブ運用 株式や債券の組み入れ比率を調整して、ベンチマークを上回る運用収益を目指す 高め 高め

理想の運用成果を残すためには、投資信託の運用方針がパッシブ運用か、もしくはアクティブ運用かも商品を見極めるポイントです。

コストやリターンのバランス

確定拠出年金企業型は、老後の資産形成を目的として、時間をかけて積立運用をしていくものです。運用にはコストがかかり、その代表格が「信託報酬」です。

信託報酬とは、商品を保有し続けるために負担しなければならない手数料で、商品の種類によって年0.1%〜2.00%を目安に発生します。

一見すると微々たる手数料率ですが、長期間に及ぶと決して見過ごせないコストになっていきます。
運用成果でリターンが大きくとも、信託報酬が高い商品もあるため、双方を見比べたうえで商品選定をしていくことが重要です。

配分変更やスイッチングで資産調整も可能

確定拠出年金企業型で商品を一度選択したら、その後ずっと変更できないわけではありません。選んだ商品はいつでも変更をすることができます。

変更方法には、配分変更とスイッチングという2つの方法があります。両者は似ているようでその仕組みは全く異なります。

配分変更

配分変更とは、毎月購入する運用商品の配分や、種類を変更することを指します。

たとえば、毎月10,000円の掛金でA商品に5,000円、B商品に3,000円、C商品に2,000円という配分で運用していたものを、翌月以降はA商品0円、B商品3,000円、C商品に2,000円そして5,000円で新たにD商品で運用するというように、翌月以降の掛金の配分先を替えることで配分変更されます。

配分変更は、年齢やリスク許容度の変化により、リスク・リターンの大きい(もしくは小さい)運用方法から、小さい(もしくは大きい)運用方法へ切り替えるために行います。

スイッチング

スイッチングとは、これまで積み上げてきた資産を売却して、手持ちの資産構成を組み替えることです。

例えば、A商品・B商品・C商品の3つの商品を運用していたとします。しかし、運用環境の変化などにより資産構成を組み替えたい場合に、A商品の一部を売却して利益を確定させたあと、別のD商品を購入するといったことがスイッチングです。

スイッチングは商品の一部を売却することとなるため、資産の確定が可能です。値上がりしている商品の損益がプラスになったタイミングでスイッチングを行うことで、利益を確定することができます。

なお、スイッチングをするとコストがかかる投資信託があります。信託財産留保額の数字が入っている商品には注意しましょう。

どのような運用方法が適切か悩んだら専門家へ相談しよう

確定拠出年金企業型の商品群は「元本確保型商品」と「元本変動型商品」に分類されます。

また、元本変動型商品にあたる投資信託も、債券投資信託・株式投資信託そして、複数の債券や株式投資信託をミックスさせたバランスファンドがあります。さらに、債券よりも株式の方が、また国内よりも海外商品の方がリスクもリターンも大きいなど、商品によって特徴やリスク・リターンは異なるので、自分に合う商品を見極めて運用しましょう。

商品選びに悩んだら、専門家に相談することがおすすめです。アイマークでは、確定拠出年金企業型の商品選択に関する内容をはじめ、さまざまなファイナンシャルセミナーを開催しています。専門家によるアドバイスが欲しい方は、ぜひ内容を確認してみましょう。

コロナ第2波で、株価また大きく下落しますか?

こんにちは アイマーク代表で
確定拠出年金相談ねっと 認定FPの村松です。

お客様から、質問を受けました。

「コロナ第2波で、株価はまた大きく下落しますか?」

私が持っている回答は、ただひとつです。

そのことを、私の言葉でお話しする前に、ご紹介したい一冊があります。

長期投資をお客様におすすめし始めた20年前に読み、

今でも相場が大きく揺れ動いたとき、

私自身の心を落ち着かせるために、

手に取る長期投資の教科書、


日本経済新聞出版社「敗者のゲーム」

日本経済新聞出版社「敗者のゲーム」

 

チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』


から、その答えが書いてある部分を
抜粋させていただきます。

 市場タイミングをはかる取引がいかに難しいかは、
あるプロの率直な嘆きからもよく理解できる。

「市場タイミングに関する興味深いアプローチをいろいろ見てきて、
40年間の運用でそのほとんどを試してみた。

しかし、自分がやる前は、偉大な方法であったかもしれないが、
私の時には、どれひとつとして、うまくいかなかった。なにひとつ!」

 年老いたパイロットや、向こう見ずなパイロットはいるが、
向こう見ずで、長生きしたパイロットはいないという。

同じように、市場タイミングで繰り返し成功を味わった投資家もいない。

欲望や恐怖心に駆られた選択は、
たいてい遅すぎるか、間違っているものだ。

長い目で見れば、株式市場は投資家が売った後も、
ほぼ同じ水準で推移する。

だから、

ときどき売却する投資家の利回りは、
単純に持ち続ける投資家と比べて低い。

よく考えてみれば、

市場動向を予測し、安く買って高く売ることで、

競争に勝つことが不可能なのは明らかだろう。
                 (抜粋終わり)

 
いかがでしょうか?

2020年6月5日現在、コロナ後の株式市場は、

落ち着きを取り戻し、

最高値の水準に戻るか?

という動きを示しています。

大幅下落の前に、

株式を売却して、ほっとした投資家は、

次の投資機会を狙いながら、

急上昇の波を待っていたはずです。

みなさんは、戻りの波に乗っていますか?

私は、戻りの波に乗るのは難しいので、
下落した場合でも、波から降りないことが大事だと
お伝えしたいのです。

この流れに乗り遅れた方に質問です。

次の暴落を待ち望み、

それまでは現金を持ち続けますか?

チャールズ・エリスの言う通り、

タイミングを計らず、

市場に長く居続けるためにも、

1日でも早く、マーケットに戻っていただきたい、

そして、これからは波から降りないで老後まで、いや死ぬまで

波と付き合っていただきたい。

そのように、私はお伝えし続けています。

 

 

長期投資に日本の株式が向かない3つの理由

確定拠出年金相談ねっと認定FP

保険アイマーク 代表の村松です。

 

今回は、日本の株式市場が長期投資に不向きな理由を挙げてみます。

念のためにお伝えしておきますが、私がお伝えしたいのはあくまで長期の投資対象としてふさわしいかであり、価格変動が激しい日本株式は短期で結果を出したい投資家にとっては大変おもしろい投資対象であることを否定するものではありません。

今回のコラムは『人生100年時代』の到来に備えて、長期投資をはじめようとする投資初心者にむけたメッセージだとご理解ください。

 

長期投資に日本の株式が向かない理由 1

 

政府・日銀の介入

私が以前書いたコラムにも引用させていただきましたが、ピーター・リンチという投資家は日本市場について以下のように感想を書いています。

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先進国の株式は信頼できるのですか?

保険アイマーク 代表

確定拠出年金相談ねっと 認定FPの村松です。

今回は、私たちに良くいただくご質問についてお答えしていきます。

保険アイマークさんは投資セミナーで先進国の株式について語っていますが、本当に信頼できるのでしょうか?

『日本人は預貯金が好きで、アメリカ人は預貯金よりも株式や投資信託で財産を持っている。』

これは、統計が証明しているあきらかな事実です。

今では常識のように語られている、日米の投資マインドの違いですが、こうなるまでには米国やヨーロッパでは大変な時間と労力が費やされているのです。

投資の勉強を続けていると、アメリカ人も実は日本人と同じように預貯金が好きで、株式をギャンブルと同一視していた時代があったことに気づきます。保険アイマークの社内にある書籍から、投資家たちが国民をどのように導いていったのかを確認してみましょう。

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