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確定拠出年金企業型の導入で得られる従業員のメリットとは

こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 認定FP

アイマーク株式会社 代表の村松です。

確定拠出年金企業型は、従業員の老後の資産形成を後押しするために企業が用意できる制度です。この制度のもと、従業員は掛金や運用益が非課税になるといった税制メリットを受けられます。この記事では、確定拠出年金企業型の導入による従業員のメリットについて詳しく解説します。

確定拠出年金企業型のメリット

ここでは確定拠出年金企業型のメリットと効果について紹介します。

積立掛金が非課税になる

確定拠出年金企業型に拠出する掛金には税金がかかりません。毎月2万円運用する場合を事例に積立掛金非課税のメリットを見ていきましょう。事例では、以下の2パターンを比較していきます。

  1. 確定拠出年金企業型に拠出した場合
  2. 給与で受け取った場合

確定拠出年金企業型に毎月2万円の掛金を拠出した場合、2万円×12ヵ月=年間24万円を運用することができます。

一方で、24万円を給与として受け取る場合、税金と社会保険料が差し引かれます。
年収600万円、配偶者あり、子ども1人の場合にかかる税金や社会保険料は合計約17%。したがって、給与で受け取った場合、24万円×約17%=約4万円の税金と社会保険料が差し引かれてしまうのです。

上記の2パターンを比較すると、実質受取金額に年間約4万円もの差が生じることがわかります。確定拠出年金企業型制度を活用すると、税金・社会保険料を節税しながら老後の備えが可能なのです。

運用益が非課税になる

確定拠出年金企業型は、運用中に利息や配当、運用益が発生した場合でも、その利益に対して税金がかかりません。これを運用益非課税といいます。

通常の資産運用では、利益がでるとその利益に対して20.315%の税金がかかります。しかし確定拠出年金企業型の運用で得た収益に税金はかからず、運用益も含めてそのまま再投資できるのです。

たとえば、毎月1万円を利回り2%で運用した場合、30年後に受け取れる金額は以下のとおりです。

  • 通常の資産運用:約461万円
  • 確定拠出年金企業型:約492万円

このように、運用益に20.315%の税率がかかるかどうかで将来の受け取り金額が約30万円異なります。

好きな運用方法を選択できる

企業の退職金制度は、すでに企業内で運用方針が決まっており、自分で選択することができません。

一方、確定拠出年金企業型は用意されている複数の運用商品の中から、自分で自由に商品を選んで運用していきます。

毎月10,000円の掛金がある場合、商品Aに3,000円、商品Bに5,000円、商品Cに2,000円というように分散して投資もできますし、商品Aのみに10,000円を全て投資することも可能です。

自分で商品を組み合わせられるため、ハイリスク・ハイリターンの運用や、満期まで持っていれば元本割れしない元本確保型商品での運用など、自分なりの投資スタイルや投資目標を掲げて運用することができます。

とはいえ、自分で投資スタイルを選べるということは、リスク管理まで自己責任で行わなければなりません。自分のリスク許容度をしっかり確認し、適切な投資スタイルを選択しましょう。

企業側のメリット

確定拠出年金企業型を導入すると、企業側にも以下の3つのメリットがあります。

  1. 社会保険料負担が減る:社会保険料は労使折半なので、従業員の掛金に社会保険料がかからないことで、企業側の社会保険料負担も減少することがあります。
  2. 退職金準備が不要:退職金制度を全て確定拠出年金企業型に移行できれば、従業員の退職金準備をする必要がなくなります。
  3. 企業会計からの退職金補填が不要:運用難により、規定額の退職金を用意できない場合、企業会計から補填をする必要がありますが、その心配がなくなります。

確定拠出年金企業型のデメリット

メリットの豊富な確定拠出年金企業型ですが、以下のデメリットも存在します。

60歳まで引き出せない

確定拠出年金企業型は、一部の例外を除いて60歳まで現金を引き出すことはできません。また、会社を辞めたとしても、60歳まで受け取ることはできません。

60歳より前に退職する場合は、その後の運用について以下の選択肢から検討しましょう。

転職先に確定拠出年金企業型がある場合 資産を持ち込み継続運用
転職先に確定拠出年金企業型がない場合 脱退一時金または確定拠出年金個人型(iDeCo)へ加入し継続運用
個人事業主・専業主婦(夫)になる場合

運営管理機関を自由に選べない

確定拠出年金企業型の運営・管理をする機関を運営管理機関といい、銀行や保険会社などの金融機関が担っています。この運営管理機関は企業が指定していることが多いので、従業員が選ぶことはできません。

運用管理機関が選べないことによるデメリットは以下のとおりです。

  • 購入したい商品がない場合もある
  • 自分の意志で商品を選べないこともある
  • 手数料や管理費などが安いところを選択できない

なお、確定拠出年金個人型(iDeCo(イデコ))の場合は、金融機関も自分で選んで加入ができます。

確定拠出年金企業型は従業員の税制メリットが大きい

確定拠出年金企業型は、掛金非課税・運用益非課税・受取時の税制優遇という3つの大きな税制メリットを備えているため、投資初心者でも安心してスタートできる仕組みです。

もちろん投資初心者以外も、いろいろな投資商品を購入する前に、確定拠出年金企業型の掛金の枠を最大限活用する方が運用効率は高まるでしょう。
確定拠出年金企業型について、より詳しく知りたい場合は、一度専門家に相談してみるのもおすすめです。

アイマークでは日頃から資産運用に関するセミナーを定期的に開催しており、疑問や不安も専門家へ直接質問が可能です。ぜひ、以下のセミナー情報よりご希望の内容や日時を確認してみてください。

セミナー情報はこちらからご覧ください。

60歳より前に退職した場合の確定拠出年金企業型は?

こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 認定FP

アイマーク株式会社 代表の村松です。

確定拠出年金企業型は、原則60歳まで受け取れません。しかし、60歳より前に会社を退職して、違う会社に所属する場合、確定拠出年金企業型はどうなるのでしょうか?

結論から言うと、確定拠出年金企業型がある企業へ転職する場合も、自営業や専業主婦(夫)になる場合も共に運用を継続することができます。

この記事では、確定拠出年金企業型のある企業を途中退職した場合の手続きの流れや注意点を解説しています。

退職時は転職先に確定拠出年金企業型があるかチェック

現在、確定拠出年金企業型で運用している人は、退職前に今後の運用方法を検討しましょう。

転職先に確定拠出年金企業型がある場合

転職先に確定拠出年金企業型制度があり、なおかつ本人にも加入者資格がある場合は、新しい勤務先の確定拠出年金企業型の加入者となることができます。

加入に必要な手続きは転職先の規定に基づくため、担当部署に確認するようにしましょう。

転職先に確定拠出年金企業型がない場合

転職先に確定拠出年金企業型がない場合は、確定拠出年金個人型(iDeCo(イデコ))の加入者、または運用指図者※1)への移換もしくは脱退一時金制度を受けることとなります。

なお、確定拠出年金企業型の場合、運用の窓口となる運営管理機関は会社ごとに決まっていますが、確定拠出年金個人型(iDeCo(イデコ))は自分で運営管理機関となる金融機関を選んで、口座開設をしなければなりません。

※1)運用指図者とは毎月の掛金を拠出せずに運用だけ行う人のことです。60歳以降で定年退職をしている社員や失業で掛金を拠出できず、拠出をストップするケースがあります。
なお、運用指図者に対して、毎月掛金を拠出している人を加入者といいます。

脱退一時金に関しては記事後半で詳しく解説します。

退職後に公務員や自営業、専業主婦(夫)になる場合

公務員や自営業、専業主婦(夫)には確定拠出年金企業型はありません。そのため、それぞれ確定拠出年金への加入を希望する場合は確定拠出年金個人型(iDeCo(イデコ))に加入する必要があります。

転職・退職後に必要な移換の手続きとは

60歳より前に確定拠出年金企業型のある企業を退職しても、これまで積み立てた金額を退職金として受け取れるわけではありません。
確定拠出年金企業型制度のある企業へ転職した場合や、iDeCo(イデコ)に移換する場合の確定拠出年金の扱いについて解説します。

転職先の確定拠出年金企業型への手続き方法

手続き先 新しい勤務先
手続き期限 資格喪失日の翌月から6ヶ月以内
手数料
  • 旧勤務先の移換手数料
  • 新勤務先の移換手数料

転職先の確定拠出年金企業型に移換する場合は、新しい職場の担当者から「個人別管理資産移換依頼書」をもらい必要事項を記入して提出します。

なお、前の勤務先で選んでいた運用商品は一度現金化されて、デフォルト商品(何もしなければ自動選択される商品)に資産が配分されてしまいます。

希望する運用商品とは異なった商品に資産配分されていることがあるため、その場合は、移換完了の通知が届いたと同時に商品の資産配分を変更しましょう。

さらに、以前の勤務先と、新しい転職先では運営管理機関や取扱い運用商品が異なるため、改めて商品知識の習得が必要になることが考えられます。

確定拠出年金個人型(iDeCo(イデコ))への手続き方法

手続き先 自分で選択した運営管理機関(受付金融機関)
手続き期限 資格喪失日の翌月から6ヶ月以内
手数料
  • 旧勤務先の移換手数料
  • 国民年金基金連合会への移換手数料

iDeCo(イデコ)に移換する場合は、自分で手続きを行う必要があり、転職先に確定拠出年金企業型がない場合や、自営業・専業主婦(夫)になる場合などが該当します。

まずは自分で選択した運営管理機関からiDeCo(イデコ)に加入し、確定拠出年金企業型の資格喪失から6ヵ月以内に資産移換の依頼まで完了させましょう。

前にも述べましたが、iDeCo(イデコ)は各金融機関で取り扱っており、運営管理機関を自由に選ぶことができます。手数料や自分にあった商品ラインナップを比較しながら、iDeCo(イデコ)口座を開設する金融機関を選びましょう。

なお、金融機関に申込の際に予め移換が必要なことを伝えておけば、口座開設の書類と同時に「個人別管理資産移換依頼書」を郵送してもらえます。

申込~口座開設までは、約1〜2ヵ月かかることを想定しておきましょう。

6カ月以内に手続きを行わないと運用されずに現金へ自動移換される

確定拠出年金企業型でもっともやってはいけないことの1つが、6ヶ月以内に手続きをしないことです。
転職先への確定拠出年金企業型、もしくはiDeCo(イデコ)への移換のいずれの場合も、退職後6ヵ月以内に移換をしなかった場合は資産が現金化され、国民年金基金連合会に自動移換されてしまいます。

現金化されているため運用もされていません。さらに、自動移換をされると以下のような手数料がかかります。

手数料の内容 税込手数料 詳細
特定運営管理機関への移換手数料 3,300円 特定運営管理機関に自動移換される時の手数料
自動移換に関する事務手数料 1,048円 特定運営管理機関に自動移換される時に、国民年金基金連合会に徴収される手数料
特定運営管理機関手数料 52円/月 特定運営管理機関に移換されてから4ヵ月後の月末までに移換などの手続きがされていない場合、以降毎月徴収される手数料。
特定運営管理機関からの移換手数料 1,100円 特定運営管理機関から転職先の確定拠出年金企業型またはiDeCo(イデコ)に移換するときにかかる手数料

自動移換をされると、それだけでも3,300円+1,048円=4,348円の手数料がかかります。
また、4ヵ月目以降からは毎月52円の管理手数料が、さらに転職先の確定拠出年金企業型やiDeCo(イデコ)に移換し直す際に1,100円がかかります。

また、自動移換の間は老齢給付金の受給要件である通算加入者期間に算入されないため、長期間置いておくと60歳からも受け取れなくなる可能性があるため注意が必要です。
自動移換にならないようくれぐれも気を付けて、退職後はすぐに移換手続きをするように心がけてください。

転職先の会社によっては企業型と個人型の同時加入も可能

企業によっては、確定拠出年金企業型とiDeCo(イデコ)の同時加入を認めているところもあります。
確定拠出年金企業型は金融機関を選べませんが、iDeCo(イデコ)は自分の好きな金融機関を選べます。
また、確定拠出年金企業型とiDeCo(イデコ)の同時加入によって、老後に向けての資産形成がより加速しますが、iDeCo(イデコ)は毎月自己負担の手数料がかかります。一方、確定拠出年金企業型は手数料は会社負担で運用可能な点を抑えておきましょう。

同時加入を検討する場合は、手数料負担も含めてiDeCo(イデコ)が本当に必要か、充分に検討する必要があります。

要件は厳しいが退職時に解約も可能

確定拠出年金企業型は60歳までは解約できません。しかし、要件は厳しいものの解約して脱退一時金を受け取ることが可能なケースもあります。

解約をして脱退一時金を受け取るための要件は以下の通りです。

確定拠出年金企業型から脱退一時金を受け取る
  • 確定拠出年金企業型の加入者・運用指図者、またはiDeCo(イデコ)の加入者・運用指図者でないこと
  • 確定拠出年金企業型の個人別管理資産が1.5万円以下であること
  • 確定拠出年金企業型の加入者資格を喪失した日(退職日の翌日)から6ヵ月を経過していないこと
iDeCoから脱退一時金を受け取る
  • 国民年金の第1号被保険者で、保険料の納付が一部または免除されていること
  • 障害給付金の受給権者でないこと
  • 通算拠出期間が1ヵ月以上3年以下、または、個人別管理資産が25万円以下であること
  • 確定拠出年金企業型またはiDeCo(イデコ)の資格喪失日から2年を経過していないこと
  • 確定拠出年金企業型から脱退一時金の支給を受けていないこと

上記の要件を満たした場合のみ、確定拠出年金企業型を解約して脱退一時金を受け取ることが可能です。

移換先に悩んだら専門家のセミナーへ参加してみよう

確定拠出年金企業型のある企業を60歳までの間に退職した場合、次に行く会社に同制度があれば、転職先の担当部署で移換手続きを行います。

また、転職先に確定拠出年金企業型がない場合や個人事業主・専業主婦(夫)になる場合は、iDeCo(イデコ)に加入することで継続して運用ができます。

資格喪失から半年以上何もしないと自動移換されてしまい、手数料が引かれ運用ができなくなる点に注意し、速やかに移換の手続きを済ませましょう。

不明な点があれば専門家への相談やセミナーの参加がおすすめです。

確定拠出年金企業型と退職金の4つの違いについて

こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 認定FP

アイマーク株式会社 代表の村松です。

確定拠出年金企業型と退職金は、どちらも老後生活資金として役立つ制度です。大きな役割は同じですが、その仕組みや、運用方針には多くの違いがあります。この記事では、両者の違いと、確定拠出年金企業型のメリットとデメリットについてご紹介します。

退職金と確定拠出年金企業型の4つの違い

退職金と確定拠出年金企業型の主な違いについて確認していきましょう。

  退職金 確定拠出年金企業型
掛金の仕組み 会社が準備 基本は会社が掛金を拠出。しかし、従業員の給与の一部を掛金にあてたり、任意で上乗せしたりできる場合もある(マッチング拠出)。
受給額や受け取り方法 社内の退職金規定により、勤続年数や役職で決定 積み立てた掛金の運用実績による
運用方針の決定 社外積立の場合は、会社の担当部署が行う 従業員自身で決定・変更が可能
税制の取り扱い 退職所得控除
  • 掛金は全額所得控除
  • 利息や配当、運用益は非課税
  • 一時金受取は退職所得控除/年金受取は、公的年金等控除の対象

掛金の仕組み

退職金は企業が外部積立で用意する場合でも、毎月掛金を拠出し、退職金規定によって役職や勤続年数でおおよその支払金額が決まっています。万が一、退職金支給時に積立額が不足している場合は、企業が追加負担をして支払わなければなりません。

一方、確定拠出年金企業型は企業が掛金を負担する点は同じですが、掛金があらかじめ決まっています。また、毎月の拠出限度額は55,000円と27,500円であり、以下のように加入している制度によって異なります。

 

加入状況 拠出限度額
確定拠出年金企業型 のみ加入している 月額55,000円(年額660,000円)
+中小企業退職金共済
+退職一時金
+確定給付企業年金 月額27,500円(年額330,000円)
+厚生年金基金

また、確定拠出年金企業型には、従業員の任意で上乗せ拠出できるマッチング拠出や、給与の一部を確定拠出年金企業型の掛金として活用するかどうかを選択できる「選択制確定拠出年金」など、掛金の拠出方法に豊富な選択肢が用意されています。

受給額や受取方法

退職金は、定年退職ではない場合も退職金規定に基づいた金額が支払われます。

一方、従業員が個人で投資スタイルを選べる確定拠出年金企業型は、どのような運用方法を選択したかによって退職時の受取金額が変わります。なお、一部の例外を除いては60歳より以前に退職金として受け取ることができません。

受取方法は退職金・確定拠出年金企業型のいずれの場合も、年金形式または一時金形式のどちらからでも選択できます。

税金の扱い

退職金は受け取りの段階で退職所得控除の対象になります。一方で、確定拠出年金企業型は、運用中や受け取り時に利用できる控除が複数あるため、以下を参考にしてください。

適用場面 控除
拠出時 掛金 全額所得控除
運用中 運用益 非課税
受取時 年金形式 公的年金等控除
一時金形式 退職所得控除

運用方針

退職金制度の場合、運用方針は企業が決定し、支払いまでの全責任を負います。

一方、確定拠出年金企業型は用意されている複数の商品の中から従業員が商品を選んで運用します。そのため、運用の結果は従業員自身が責任を負わなければなりません。

確定拠出年金企業型のメリット

確定拠出年金企業型の代表的なメリットである、税制優遇と、便利なポータビリティについて解説します。

転職先へ持ち運びができる

確定拠出年金企業型は、原則60歳まで受け取ることができません。そのため、確定拠出年金企業型を導入している会社を60歳より前に退職・転職した場合でも受け取ることはできず、基本的には積み立てた資産を持ち運ぶようになります。この持ち運び制度を「ポータビリティ」といいます。

ポータビリティは、転職先企業に確定拠出型年金企業型があるかどうかによって、対応が以下のとおりに異なるのです。

転職先に確定拠出年金企業型がある場合 転職先の確定拠出年金企業型へ移換
転職先に確定拠出年金企業型がない場合 脱退一時金もしくは確定拠出年金個人型(iDeCo)へ移換
自営業・個人事業主として働く場合
公務員になる場合
専業主婦(夫)になる場合

税制優遇が受けられる

確定拠出年金企業型の掛金には、所得税・住民税がかかりません。そのため、確定拠出年金企業型で毎月の給与から1万円を拠出したとすると、1万円をそのまま運用にまわすことができます。

しかし、一旦給与として受け取った後に運用する場合は、1万円から所得税・住民税が差し引かれた金額からの運用スタートと考えることができます。

また、確定拠出年金企業型で運用中の利息・配当・運用益には税金がかからず、再投資が可能です。通常なら運用益に20.315%の税金がかけられてしまうことから、大きな税制優遇といえます。

さらに、受取時も一時金で受け取った場合は退職所得控除、年金形式で受け取った場合は公的年金等掛金控除という税制優遇を受けることができます。

確定拠出年金企業型のデメリット

魅力的なメリットの多い確定拠出年金企業型ですが、利用にあたって以下のようなデメリットも存在します。

元本割れのリスクがある

確定拠出年金企業型の商品ラインナップの中には、満期まで持っていれば元本割れしない「元本確保型」の商品と、運用によって元本が変動する「元本変動型」の商品があります。両者には優劣はありませんが、自分のリスク許容度に応じた選択ができなければ、望まない運用結果になってしまうことを忘れてはなりません。

商品によっては、元本割れのリスクがあることを理解して商品選択を行いましょう。

社内留保ではないため運用リスクの考慮が必要

確定拠出年金企業型は、従業員が自分で掛金を拠出して運用していくものなので、企業が他の制度を併用していない限り社内留保はありません。つまり、確定拠出年金企業型で満足のいかない結果になっても、企業が負担してくれることはないのです。

将来の受給金額が確定していないことや、運用リスクも考慮しておく必要があります。

退職金と確定拠出年金企業型の違いを理解して役立てよう

退職金と確定拠出年金企業型は、どちらも企業が利用できる退職金制度ですが、その仕組みや運用方針には大きな違いがあります。公的年金制度が、今後も現在の水準で推移するとは限りません。

退職金や確定拠出年金企業型の仕組みを理解して、自分の老後の資産形成に役立てていきましょう。
もし、内容がわかりにくいと感じた場合は、専門家に直接相談してみるのがおすすめです。アイマークでは、確定拠出年金企業型を始めとしたさまざまなファイナンシャルセミナーを開催しておりますので、ぜひ日程や内容を確認してみてはいかがでしょうか。

確定拠出年金企業型で運用できる商品の種類と選定のポイント

こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 認定FP

アイマーク株式会社 代表の村松です。

確定拠出年金企業型には、多くの運用商品が存在します。毎月掛金を拠出して、数ある投資商品のなかから自分で選んで投資をしていく必要があるため、それぞれの商品特徴をしっかりと理解しておきたいものです。

この記事では、確定拠出年金企業型で運用できる商品の分類方法と、選定のポイントをご紹介します。

確定拠出年金企業型の運用商品は大きく分けて2種類

確定拠出年金企業型で取り扱う商品は、預金や保険商品、各種投資信託などさまざまな種類があります。多くの商品があって迷ってしまいますが、まずは大きく「元本確保型商品」と「元本変動型商品」の2つに分類することができます。

元本確保型|原則元本割れが起こらない商品

元本確保型商品は満期まで持っていれば原則元本割れしない商品です。主に以下の特徴があります。

  • 原則として、いつ解約しても元本は保証されている
  • 利率は一定期間ごとに固定と見直しが行われ、解約まで運用が続く
  • 期間は商品によって異なる

主に「定期預金」や「保険」商品があり、リスクは極めて少ないですが、大きく増えることも期待できません。元本確保型は、資産を減らしたくないと考える人におすすめの商品です。

元本変動型|リスクとリターンが大きめの商品

元本変動型商品は、大きな収益が期待できる反面、元本割れをする可能性もある商品です。主に以下の特徴があげられます。

  • 元本が保証されていないため、資産が減る可能性もある
  • 運用成果によっては資産を大きく増やすことも可能

確定拠出年金企業型においては元本変動型商品の取扱いは「投資信託」のみとなっています。元本変動型は、ある程度のリスクを取りながら資産を増やしていきたい人におすすめの商品です。

運用商品の選定ポイント

運用商品は、大きく元本確保型と元本変動型に分けられますが、特に元本変動型は数多くの商品があります。そのため、各商品の特徴やリスク、リターンについても理解をしておきましょう。

金融商品の運用方法

元本変動型商品である投資信託は、その投資対象によって以下のように3つに分類されます。

投資信託の種類 特徴 リスクとリターン
株式投資信託
  • 株式を組み入れた投資信託
  • 国内株式投資信託と海外株式投資信託に分類できる
ハイリスク・ハイリターン
債券投資信託
  • 債券を組み入れた投資信託
  • 国内債券投資信託と海外債券投資信託に分類できる
ミドルリスク・ミドルリターン
バランスファンド 株式投資信託や債券投資信託など複数の種類を組み合わせた投資信託 組み合わせ方によって調整可能

 

一般的には元本確保型商品が最もリスクもリターンも小さく、債券投資信託がミドルリスク・ミドルリターン、株式投資信託はハイリスク・ハイリターンに分類されます。

また、同じ債券投資信託や株式投資信託のなかでも、国内よりも為替リスクの影響がある海外の商品の方が、リスクもリターンも大きい傾向です。

確定拠出年金企業型は、複数の商品ラインナップから、それぞれの投資商品のリスクとリターンを考慮して自分で選択していく必要があるため、その特徴をしっかり理解しましょう。

運用方針は「パッシブ」か「アクティブ」か

投資信託とは、投資のプロであるファンドマネージャーにお金を預けて運用をおまかせするものです。

そして、投資信託にはそれぞれ運用方針があり、大きく「パッシブ運用」と「アクティブ運用」の2つの手法に分類されます。両者の主な特徴は以下のとおりです。

運用方針 特徴 リスクとリターン 手数料
パッシブ運用 日経平均株価やTOPIXをベンチマークとし、ベンチマークに連動した運用収益を目指す 低め 低め
アクティブ運用 株式や債券の組み入れ比率を調整して、ベンチマークを上回る運用収益を目指す 高め 高め

理想の運用成果を残すためには、投資信託の運用方針がパッシブ運用か、もしくはアクティブ運用かも商品を見極めるポイントです。

コストやリターンのバランス

確定拠出年金企業型は、老後の資産形成を目的として、時間をかけて積立運用をしていくものです。運用にはコストがかかり、その代表格が「信託報酬」です。

信託報酬とは、商品を保有し続けるために負担しなければならない手数料で、商品の種類によって年0.1%〜2.00%を目安に発生します。

一見すると微々たる手数料率ですが、長期間に及ぶと決して見過ごせないコストになっていきます。
運用成果でリターンが大きくとも、信託報酬が高い商品もあるため、双方を見比べたうえで商品選定をしていくことが重要です。

配分変更やスイッチングで資産調整も可能

確定拠出年金企業型で商品を一度選択したら、その後ずっと変更できないわけではありません。選んだ商品はいつでも変更をすることができます。

変更方法には、配分変更とスイッチングという2つの方法があります。両者は似ているようでその仕組みは全く異なります。

配分変更

配分変更とは、毎月購入する運用商品の配分や、種類を変更することを指します。

たとえば、毎月10,000円の掛金でA商品に5,000円、B商品に3,000円、C商品に2,000円という配分で運用していたものを、翌月以降はA商品0円、B商品3,000円、C商品に2,000円そして5,000円で新たにD商品で運用するというように、翌月以降の掛金の配分先を替えることで配分変更されます。

配分変更は、年齢やリスク許容度の変化により、リスク・リターンの大きい(もしくは小さい)運用方法から、小さい(もしくは大きい)運用方法へ切り替えるために行います。

スイッチング

スイッチングとは、これまで積み上げてきた資産を売却して、手持ちの資産構成を組み替えることです。

例えば、A商品・B商品・C商品の3つの商品を運用していたとします。しかし、運用環境の変化などにより資産構成を組み替えたい場合に、A商品の一部を売却して利益を確定させたあと、別のD商品を購入するといったことがスイッチングです。

スイッチングは商品の一部を売却することとなるため、資産の確定が可能です。値上がりしている商品の損益がプラスになったタイミングでスイッチングを行うことで、利益を確定することができます。

なお、スイッチングをするとコストがかかる投資信託があります。信託財産留保額の数字が入っている商品には注意しましょう。

どのような運用方法が適切か悩んだら専門家へ相談しよう

確定拠出年金企業型の商品群は「元本確保型商品」と「元本変動型商品」に分類されます。

また、元本変動型商品にあたる投資信託も、債券投資信託・株式投資信託そして、複数の債券や株式投資信託をミックスさせたバランスファンドがあります。さらに、債券よりも株式の方が、また国内よりも海外商品の方がリスクもリターンも大きいなど、商品によって特徴やリスク・リターンは異なるので、自分に合う商品を見極めて運用しましょう。

商品選びに悩んだら、専門家に相談することがおすすめです。アイマークでは、確定拠出年金企業型の商品選択に関する内容をはじめ、さまざまなファイナンシャルセミナーを開催しています。専門家によるアドバイスが欲しい方は、ぜひ内容を確認してみましょう。