確定拠出年金相談ねっと 認定FP
アイマーク株式会社 代表の村松です。
確定拠出年金企業型は企業、従業員に節税効果がある税制上有利な制度です。
しかし、企業の掛金の負担などの要因から、導入している企業が大企業に偏っている印象があります。この記事では、確定拠出年金企業型の節税効果やメリット・デメリットについて解説しています。
確定拠出年金企業型とは
確定拠出年金企業型とは、加入者が用意された商品の中から、自分に合う資産を選んで運用する制度です。加入者は原則60歳まで運用し、退職金として将来受け取ります。
導入にあたり、事業主と従業員の同意、運営管理機関や資産管理機関の選任が必要です。運営管理機関は、加入者の管理、運用商品の情報提供、制度の運営などを行い、資産管理機関は、加入者のお金の管理を行います。
基本的に、手続きの窓口となるのは、銀行や保険会社などの運営管理機関となります。
確定拠出年金企業型と確定給付型の企業年金との違い
企業で導入できる主な退職金制度と確定拠出年金企業型を比べてみると以下の通りになります。以下の3つにわけて紹介していきます。
- 確定拠出年金(確定拠出型)
- 厚生年金基金(確定給付型)
- 確定給付型企業年金(確定給付型)
比較すべきポイントは、確定拠出型は会社からの掛金が決まっているのに対して、確定給付型は給付する退職金を保障している点です。
もう1つの比較すべきポイントは、確定拠出型が資産運用を加入者(従業員)が行っているのに対して、確定給付型は資産運用を会社が行っている点です。
確定拠出型 | 確定給付型 | ||
確定拠出年金 | 厚生年金基金 | 確定給付型企業年金 | |
しくみ | 掛金が決まっている | 給付額を保障 | 給付額を保障 |
運営 | 事業主 | 厚生年金基金 | 事業主、企業年金基金 |
掛金 | 事業主、規約に定めたときは本人掛金も可能 | 加算部分はほとんどが事業主負担。代行部分は事業主と加入者が折半 | 事業主 |
資産運用 | 加入者 | 会社 | 会社 |
税制(拠出時) | 非課税 | 非課税 | 非課税 |
運用 | 特別法人税課税(凍結中) | 非課税 | 特別法人税課税(凍結中) |
退職時 | 公的年金、退職所得控除 | 公的年金、退職所得控除 | 公的年金、退職所得控除 |
確定拠出年金企業型のメリット
確定拠出年金企業型を上手く活用できれば、企業と従業員にメリットがあります。
確定拠出年金企業型には、主に以下の3つのメリットがあります。
- 掛金は事業主、従業員ともに控除対象
- 事業主の負担が増えない「選択制」
- 積立金不足の補填の必要が無い
掛金は事業主、従業員ともに控除対象
事業主が拠出する確定拠出年金企業型の掛金は、福利厚生費として全額損金扱いとなります。従業員側は掛金に対して税金や社会保険料がかかりません。
掛金ではなく給料を増やした場合、会社は損金になりますが、従業員は増加した給料分に税金と社会保険料がかかります。
事業主の負担が増えない「選択制」
確定拠出年金企業型を導入することによって、会社の掛金の負担が増えてしまいます。しかし「選択制」を導入することで問題を解決できます。
確定拠出年金企業型の選択制とは、給与の一部を掛金にするかしないかを従業員が選べる制度のことです。
例えば、給料のうち1万円までを確定拠出年金企業型の掛金として利用できる場合、従業員は、0円~1万円の範囲で掛金を選択できます。
企業は掛金として新たな費用を発生させることなく、確定拠出年金企業型を導入できます。
従業員は、選択した金額に税金と社会保険料の負担がなくなるため、税負担が軽減されるのです。
従業員が選択できるため、企業が一方的に福利厚生を導入したという不満を持ちにくく、合意を得やすいメリットもあります。
積立金不足の補填の必要が無い
確定給付型の場合には、事業主が掛金を負担、運用を行い、退職金の支払いに備えています。準備した退職金から、社内の退職金規定に基づき社員の退職時に給付を行いますが、運用環境の悪化により、約束した退職金を準備できないケースが増えています。
準備できなかった退職金の不足額は、事業主が負担しなければなりません。
確定拠出型であれば、毎月決まった掛金を拠出し、運用は従業員が行うため、将来の積立不足額を追加で負担するリスクがなくなります。
確定拠出年金企業型のデメリット
メリットがたくさんある確定拠出年金企業型ですが、デメリットもあることを把握しておく必要があります。
確定拠出年金企業型には、主に以下の3つのデメリットがあります。
- 従業員は60歳まで受け取れない
- 事務コストがかかる
- 制度導入に時間がかかる
従業員は60歳まで受け取れない
通常の確定拠出年金企業型で企業が掛金を拠出する場合も、選択制で掛金を選択した場合も、運用した金額は原則60歳まで受け取れません。
60歳になる前に退職した場合にも退職金として掛金をすべて受け取れない点に注意しておきましょう。
事務コストがかかる
選択制確定拠出年金企業型を導入することで、追加で発生する費用はなくなりますが、導入に伴うコストが発生します。
導入に伴うコストとして、社員教育や毎月の手数料、初期導入費用などがあります。また、人事部や経理部担当が窓口になることが多いため、導入に伴って労働コストが増加することも把握しておきましょう。
制度導入に時間がかかる
確定拠出年金企業型の導入までの流れは以下の通りです。
- 申請・制度作成業務
- 労使の合意
- 商品選定と提示
確定拠出年金企業型を導入するためには、ある程度時間がかかることを理解しておきましょう。
申請・制度作成業務
制度内容の決定・規約の作成をした後、厚生局の承認を得ます。社会保険労務士や年金制度に詳しい専門家の助けを借りながら、制度の届出手続きを行うと安心です。
労使の合意
労使の合意がなければ、確定拠出年金企業型は導入できません。労使の合意に向けた説明会など従業員に対する丁寧な説明が必要です。
商品選定と提示
運用商品の選定には、リスク商品や元本確保型商品の商品数など一定のルールがあります。定期的な見直しや報告書の作成などが必要であるため、導入後にも手続きが必要なことも把握しておきましょう。
まとめ
確定拠出年金企業型を導入することによって以下の3つのメリットがあります。
- 掛金は事業主、従業員ともに控除対象
- 事業主の負担が増えない「選択制」
- 積立金不足の補填の必要が無い
確定拠出年金企業型を導入することによるメリットは大きいですが、従業員が掛金を原則60歳まで受け取れないことや、事務的コストや時間がかかるデメリットもあることを理解しておきましょう。
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