ケアサポーターの曽根です。
「保険はわかりにくい」「税金はむずかしい」そんなお声をよく耳にします。でも「知らなくて損した!」はもったいないですね。ケアサポーターの私が、保険とお金・税金にまつわる情報と豆知識をやさしくお伝えしていきます。
今回は、国の社会保障制度の一つ、公的年金についてのお話。
保険アイマークの経営理念のひとつに「お客様の今と将来をとことん守ります」があります。私たちはお客様の豊かな老後をお手伝いできる手段を持っていますが、その手段を考える前に確認したいのが「社会保障」です。みなさまは健康保険・国民年金などの公的社会保障制度によって基本的に守られていますので、それを理解したうえで不足分を私的保険で用意するのが合理的ですね。
日本国内に住所を持つ20歳~60歳の方は、全員国民年金に加入しています。将来年金がいくらもらえるかは「日本人全員の関心事」とも言えるでしょう。
サラリーマンの方は厚生年金に加入しているので国民年金から外れていると勘違いされる方もいらっしゃいますが、厚生年金は国民年金を含んだ年金制度です。国民年金は基礎年金とも言われ、すべての人が加入、厚生年金はその上乗せで報酬に応じた保険料を支払っているわけです。
年金はいくらもらえるの?
将来受け取れる年金額について、国民年金の老齢基礎年金の数字で見ていきましょう。
国民年金、1人分の受給額は、
「加入期間(保険料納付期間)の長さ」だけで決まります。
計算式:77万9300円 × 加入期間(月数) ÷ 480
※平成30年度
この計算式を分かりやすくすると、加入期間1年につき約2万円の年金が支給されるというわけです。ですから加入期間が40年(480ヶ月)あった場合に満額の約80万円が支給されます。
老齢基礎年金を受け取るためには、加入期間が原則として10年以上あることが必要です。
参考までに、厚生労働省の資料によると厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は月額22万1277円、年額約265万5千円となっています。
年金はいつからもらえるの?
20歳から60歳までの40年間加入(保険料納付)して、「65歳から死亡するまで」受け取ることが基本です。
受け取り開始の年齢を「60歳から」の繰上げ支給を選ぶことができます。
逆に「70歳から」の繰下げ支給を選ぶことも可能です。
早くから年金をもらうと金額が減るってホント?
繰上げ支給にすると早い時期から年金がもらえてありがたいですね。しかし、支給額は一定の割合で減額されるので注意が必要です。
逆に、もらう時期を遅らせて繰下げ支給にすると、一定の割合で支給額が増額されます。
減額の割合は 0.5% × 繰り上げた月数
増額の割合は 0.7% × 繰り下げた月数
つまり、
5年繰り上げると 0.5%×60ヶ月=30%減額 基本80万円が 56万円に。
5年繰り下げると 0.7%×60ヶ月=42%増額 基本80万円が 113万6千円に
毎年の支給額に2倍以上の差がつくことになります。年金の支給が始まった時の金額は、
一生変わりません。厚生年金も同じ割合で減額・増額されます。
ここで年齢ごとの受け取り累計額を見てみましょう。(65歳基礎年金額80万円で計算)
60歳開始 | 65歳開始 | 70歳開始 | |
年齢 | 受取累計額 | ||
60 | 56 | 0 | 0 |
61 | 112 | 0 | 0 |
62 | 168 | 0 | 0 |
63 | 224 | 0 | 0 |
64 | 280 | 0 | 0 |
65 | 336 | 80 | 0 |
66 | 392 | 160 | 0 |
67 | 448 | 240 | 0 |
68 | 504 | 320 | 0 |
69 | 560 | 400 | 0 |
70 | 616 | 480 | 114 |
71 | 672 | 560 | 227 |
72 | 728 | 640 | 341 |
73 | 784 | 720 | 454 |
74 | 840 | 800 | 568 |
75 | 896 | 880 | 682 |
76 | 952 | 960 | 795 |
77 | 1,008 | 1,040 | 909 |
78 | 1,064 | 1,120 | 1,022 |
79 | 1,120 | 1,200 | 1,136 |
80 | 1,176 | 1,280 | 1,250 |
81 | 1,232 | 1,360 | 1,363 |
82 | 1,288 | 1,440 | 1,477 |
83 | 1,344 | 1,520 | 1,590 |
84 | 1,400 | 1,600 | 1,704 |
85 | 1,456 | 1,680 | 1,818 |
86 | 1,512 | 1,760 | 1,931 |
87 | 1,568 | 1,840 | 2,045 |
88 | 1,624 | 1,920 | 2,158 |
89 | 1,680 | 2,000 | 2,272 |
90 | 1,736 | 2,080 | 2,386 |
91 | 1,792 | 2,160 | 2,499 |
92 | 1,848 | 2,240 | 2,613 |
93 | 1,904 | 2,320 | 2,726 |
94 | 1,960 | 2,400 | 2,840 |
95 | 2,016 | 2,480 | 2,954 |
(単位:万円)
60歳支給開始と比べて、76歳以降に65歳開始が累計額で上回り、81歳で75歳開始が上回ります。年ごとにその差は開いていきますね。
繰り上げ支給を選ぶ人の理由として多くあげられているのは
・長生きしなければ損する
・年金制度の先行きが不安だから早くもらっておく。
・定年退職後の生活資金が不足、現金が必要
等です。
繰り上げ支給のメリットデメリットは?
メリット
・60歳からすぐに年金が受け取れる
・76歳までは、65歳からもらい始めるより累計額で多く受け取れる。
デメリット
・年金が一生涯減額される
・障害年金を請求することができなくなる。障害年金と老齢年金の選択でどちらが多く
もらえるかはケースによりますが、年金受給後に障害状態になっても障害年金の請求はできません。
・寡婦年金が受給できない、65歳まで遺族厚生年金が併給できない。配偶者が亡くなって遺族厚生年金が受給できる場合、繰上げ支給が不利になるケースが多いようです。
・65歳以上で受け取るよりも所得税が高くなる。厚生年金で受取額が多い人は注意が必要です。
年金制度は「長生きリスク」の備えとして最強といえます。死ぬまでずっともらえるからです。年齢が上がって労働の対価が得られず貯蓄も使い果たしたとして、頼りになるのが老齢年金。自分で用意できる資金はほぼ有限なので、長生きしてからの年金の受給金額は老後の生活を支える重要なポイントになりそうです。
おまけ
平均寿命と平均余命はどう違う?
日本人の平均寿命は、男性80.75歳、女性87.14歳です。(平成28年度厚生労働省発表)
老後の生活設計を考え始めた50歳のご主人、「俺の寿命はあと30.75年」と思っていませんか?違うんです。平均寿命から自分の年齢を引けば平均余命が出るというわけではありません。
平均寿命とは現在0歳の人の平均余命のことで、ある程度生き延びると平均寿命より長く生きる可能性が高くなります。幼少期のほうが人の死亡率が高いことがその理由です。
平成28年度の生命表によれば、50歳の平均余命は男性32.54年、女性38.21年、平均寿命より長生きになる計算ですね。さらに80歳まで長生きしたら、男性8.92年、女性は11.32年の平均余命があります。平均寿命と比べて男性は9年近く、女性も4年以上、つまり90歳前後まで長生きする可能性が高くなるのです。
公的年金のついてはマスコミで取りざたされる機会も多いですが、わからないまま不安な雰囲気に流されることがないよう、知識を身につけて判断できるようになりたいですね。
次回はねんきん定期便の見かたについてお伝えする予定です。